恋を何年休んでいますか? 2
次に会う約束をした日はすぐに来た。
「宇野ちゃん、これからどっか行くん?」
「えっ?」
雑誌のインタビューが終わり帰る準備をしていると後ろから秀太が覗き込んできた。
「今日は念入りに化粧直してるやん。デート?」
「…ちょっとごはん行くだけ」
『久しぶりに異性の人と食事に行く』
別にまだ好きとかそういうわけではないけど、やっぱり身だしなみには気を付けるし、可愛いって思われたいと思ってる。
「私、浮かれてる?」
「朝から時間気にはしてるみたいだな、とは思ってたけど(笑)」
別にウキウキしていたわけじゃない。
でも、変な緊張感があって、そわそわしていた。
「男?」
「…」
「別にいいんちゃう?
宇野ちゃんも前に進めば」
メンバーに恋愛の話をすることはない。
でも、長く一緒にいれば話さなくてもわかることはたくさんある。
私と『彼』の関係も、ちゃんと話したことは一度もなかったけれど、
秀太もちゃんと知っていたし、そして終わったことも知っていた。
「まだそういうんじゃないよ」
『好き』になる
それはどうすればいいのか、どうすればそうやって心が動くのか、今はまだ思い出せない。
でも、『好き』になるのはきっと気が付いたらそうなってるんだよね?
だから今はまだ『高坂さん』と恋に落ちる可能性がないとは断言できないし、この先付き合うということが起こるかもしれないけど、今はまだ心がときめいたりしている気配は感じない。
ただもうすでに会う前から心が重いけど。
『好きにならなきゃ』
頭の中でこだまする声。
『過去を忘れるために』
前に進むってそういうこと?
過去を忘れるには、新しい恋をするのがいいって何かで読んだけど、
本当にそうなのかな?
気持ちはなくてもいいの?
それとも気持ちはあとからついてくるの?
『好き』じゃなくてもキスしたり抱き合ったり出来る?
ただ好ましい人でも、出来る?
そんな自分が想像出来ない。
自分がそんな器用な人間じゃないことはわかってるから。
『自分の気持ちにウソをつくのは得意でしょ?』
もう一人の私が言う。
『好き』は待ってるだけじゃいつまでたってもやってこないよ。
だってもう2年経った。
向こうはもう私のことなんて忘れて、新しい恋人と仲良くやっているかもしれない。
自分だけが、2年前『さよなら』した日から進めてないんだよ。
恋するだけが人生じゃないけど、
私の心はそこに止まったまま、成長を止めている。
だから『好きにならなきゃ』前に進めないんじゃないかって最近は強く思う。
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