My wish is...  第十二話



その後話し合いの場を持てないまま、1日、2日と時間が経っていく。


その間千晃と顔を合わす機会もあったけれど、避けられているのか、いや私が避けているのか、千晃ときちんと言葉を交わすこともなく時間だけが経っていた。



あの日


千晃が妊娠をしたと告白し、グループを卒業すると伝えられた日から、

私はずっと考えている。


いや本当は考えたくない。


けれど私たちの仕事は待ってくれない。


私の気持ちを置いて、どんどん決めなければならないことが迫ってくる。






「MISACHIAツアーは中止せざるおえない」




ミーティングルームには当事者である私と千晃、そしてこのユニットに関わってくれていたスタッフさんが集まっていた。



「本当に申し訳ありません」



千晃は何度も頭を下げて、ずっと謝っていた。



妊娠というおめでたい出来事に、本当ならみんな祝福して盛大にお祝いをすべきなのだろうが、妊娠、そして卒業という急な展開に多くのスタッフは困惑していた。



MISACHIAツアーはすでに動き出し、会場も押さえ、ライブのために書き下ろされた曲もすでに何曲か出来上がっていた。


本来ならそろそろチケット申し込みも始まる頃でそれに向けての二人のビジュアル写真も出来上がり、ホームページにアップされるのを待っている段階で、衣装やライブグッズも仮で製作された試作品が数日後には出来上がるころだった。





「伊藤は3月で卒業することが先日決まった。

公式に発表するのは1月に入ってからだから、それまでは公にはしないでくれ。


各方面にこれからスタッフが出向いて事情を説明するが、まだこれから調整しなくてはいけないことも多い。


とりあえず今伝えられることはMISACHIAツアーは中止になったということだ。


それに伴って衣装やグッズの製作はストップ、年明けのレコーディングは中止だ」




自分も当事者なのに、

まるで一枚スクリーンが間にあるような気がする。




今までいろいろ話し合って形にしてきたことが、


一瞬で消えていく。




なんて儚いんだろうと思うけれど、



それを私が責めたら、千晃はどうなってしまうんだろう。





「…話は以上だ。解散!」




このプロジェクトを纏めていた柊さんの一言で、皆がゆっくりと動き出す。



みんな何か言いたくて、でも何を言えばいいのかわからない。



そんな表情で、一人、また一人と部屋を後にしていく。







最後に残ったのはずっと頭を下げてみんなを見送っていた千晃と私だった。






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