My wish is...  第十九話



「めっちゃびびったんやけど」



いきなり連絡した私に、真司郎は本気で驚いた顔をして出迎えてくれた。



飛行機に乗ってからそういえばホテルを取っていないことに気づいた。

今の時期、ハワイなら観光客が多くてホテルもとりにくいだろうけど、ロサンゼルスだとそんなに気にする必要もない。


だから気づいたからといってそう慌てはしなかった。

この当てもない行き当たりばったりの旅。


こんな旅行の仕方は初めてかもしれない。


ただなんとなく、ロスを選んだことは

無意識に誰かに話を聞いてほしいかったという思いもあったのかもしれない。



空港についてすぐ、携帯の電源を入れて、

ロスで働いている友人まきちゃんにラインをしてみた。



『今ロスにいます。時間があったら会いたいな』



まきちゃんからはすぐに返事が来た。



『え、仕事?ロスのどこ?』



この後どうするかホテルも行先も何も決めてなかったので、

空港に入っているスタバで少しゆっくりとしながらメールを打つ。



『プライベート。今、空港にいるの。これからホテル探す予定です』


『ホテル取ってないの?ウチくる?』



まきちゃんは今同じ職場のオーストラリア人の彼氏と暮らしているらしい。

そう簡単に泊めてもらうのは申し訳ない気がした。



『ありがとう。でも少しゆっくりしたいからホテル取るよ。

おすすめある?』


『うーん、ちょっと待ってね』



まきちゃんとラインをしながら、

ロサンゼルスにいるはずの真司郎にもラインを送った。




『今空港にいるの。会える?』



真司郎のメールの返信は早い。

常に携帯を弄ってるのからだ。




『え?どこの空港なん?』



『ロス』



『え?一人なん?』


『うん』


『ちょ、よくわからんのやけど、旅行?』


『うん、急に思いついて』


『ホテルどこ?夕食食べた?』


『ホテルまだ取ってない。さっきついたばっかりだからまだ食事してないよ』




『え、そうなん?じゃぁ空港近くならヒルトンとかウィスティンとかは?』


『空きあるみたいやで』



ラインしながら調べてくれたのか、

ホテルのサイトのアドレスが送られてきた。




『ありがと。ウィスティンに電話してみるよ』


『ホテル着いたら連絡して。迎えに行く』


『ごめんね、急に』




『別にかまへんよ。今外やでたぶん2時間くらいで着くからちょっと待ってもらうけど』


『ありがとう、またあとでね』



まきちゃんとは明後日サンタモニカで会う約束をした。

急きょお休みを取ってくれたらしい。


そして真司郎とはこの後会う約束をし、彼が調べてくれたホテルへ行くことにする。



適当に詰めたスーツケースを引いて空港を出る。

楽しそうな家族連れやカップルの笑い声とすれ違う。



今頃、みんなはどうしているだろう。



突然日本を発った私を心配しているだろうか。



『今どこ?』



さっきマネージャーには旅行に来ていることを連絡しておいた。

さすがに居場所がわからないのはまずいから。



でも、まだ彼には連絡していなかった。



心配しているのは知ってるけど、


今は一人ゆっくりと考えたかったから。


でも、マネージャーから聞いたのだろう。

ラインのメッセージが届いた。




『ロスにいる。真司郎に連絡したから心配しないで』



少しするとラインの着信があった。



『言いたいこといっぱいあるけど、今はお互い一人で考えたほうがいいよな』


『…うん』


『いつ戻るん?』


『1週間後』


『…わかった。帰ってきたら連絡して』


『うん』


『無理すんなよ、真司郎に頼れよ』


『うん』


『やべ、マネージャーが呼んでるわ』


『リハ頑張って』


『おう。横アリ観に来いよ』


『うん、楽しみにしてる』


『気を付けて』


『うん、じゃぁまたね』




携帯を閉じると、もう空港の外まで歩いていた。


もうすぐ日が暮れる。

日本ほど寒くはないがそれでもコートのボタンをしっかりと閉めた。




暮れゆく空はどこまでも広く、鼻をかすめる埃っぽい匂いが日本とは違う場所だと教えてくれていた。




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