My wish is...  第十八話



慌ただしかった年末が終わり、年が明けた。

それからすぐ私は久しぶりにまとまった休みに入ったが、外に出る気にもならず部屋に引きこもっていた。


そんな私宛に昨日、スタッフさんからメールが届いた。


メールに添付されていたのは秋に撮影した『ココア』の画像データー。

セピア色に加工された、きらきらと輝く私たち。


雄大な自然の中で、柔らかな表情で笑い合い、手をつないでいた。

年甲斐もなくはしゃいだ自転車や花火のシーン、

用意されたココアを飲むとき口に白いミルクをつけるのに苦戦したり、

二人で考えた双子ダンス。



「…っ」



どうしようもないことだってわかっても、

責めてもしょうがないことだってわかっても、


心の底から『おめでとう』が言えない自分がいる。



もう責めない、


これからは彼女を応援していく、




そう決めたのに、





頭はまだ切り替えられず、誰にも言えない醜い感情が消えない。



年末年始はその思いを悟られないようにするので、苦しかった。




今もまだ


苦しいけれど、




「前に進まなきゃ」





『誰かに話せば楽になれる』のとは違うと経験上わかっている。


だからこれは自分で考えて乗り越えるしかないのだ。

この写真のように笑いあう日がいつか来るように、今、私は自分と向き合わなきゃいけない。




開いたままだったPCに向かい合い、『航空券 アメリカ』と検索する。


今すぐ、ここではないどこかで、少しゆっくりと自分と向き合いたかった。



もう日にちがない。


でも、今行かなきゃいけないような気がした。



机の上に広げられた千晃の卒業に向けたコメントを書こうとしていた白紙の紙をゴミ箱に捨て、立ち上がった。


逃げるつもりはない、


戦うために、


今行くべきだ。





本能に従うように私はいつもツアー移動に使っているスーツケースに荷物を詰め、パスポートを持って家を出た。




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