My wish is... 第六話
最近、千晃の様子がおかしい。
体調が悪いのか遅刻してくることもあるし、仕事の途中でふらっといなくなることがある。
具合が悪いのか聞いても大丈夫だとしか言わない。
千晃のマネージャーに聞いても、ちょっと体調を崩しているとしか言わないし、
本当に大丈夫だろうか。
千晃は自己管理もちゃんとしていて、あまり体調を崩したりはしないし、
私よりもメンタル管理もきちんとできている。
だからそんな千晃があからさまに調子が悪そうなのが気になる。
先日のMISACHIAツアーの打ち合わせの時も珍しく千晃が遅刻したし、
どこか話も上の空。
何かあったのだろうか。
「ねぇ千晃」
「あ、ごめん、宇野ちゃん。
これからコラボ商品の打ち合わせがあって急いでるんだ、またね」
声をかけたら慌てたように鞄を掴んで足早に部屋を出ていく彼女に、
私も私のマネージャーの今井さんもちょっとびっくりしていた。
「最近千晃さん、ちょっと変ですよね」
他のスタッフも困惑していた。
昔から千晃は自分のやりたいことは積極的に努力をし、形にしてきた。
だからコスメやファッションの仕事が彼女にとって大事なのはわかるけど、
AAAの仕事やMISACHIAの仕事に手を抜くことなんてなかった。
なのにこのところ、グループの活動もドームツアーが終わって暫く経った頃から本調子ではなさそうだし、MISACHIAの活動もどこか上の空なところがある。
今年もレコード大賞にはノミネートされているし、今年ももしかしたら紅白に出れるかもしれない。
それまでに今レコーディングしている新曲のMV撮影だってある。
体調が悪いなら今のうちに治しておかないと大変なことになる。
それとも…何かほかのことで悩みでもあるのだろうか。
テーブルの上にはレコード大賞用の衣装コンテと紅白が決まったとき用の衣装コンテが広げられたままになっていた。
それをなんとなく眺めながら、形容しがたいもやもやっとした気持ちが沸き上がるのを私は感じていた。
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