My wish is... 第十五話
部屋に戻ると重い空気が充満していた。
直也君も秀太もイライラしているし、そんな二人を日高君は観察しているようだ。
真司郎は千晃のことを心配しているようで、戻ってきた私に一番に気づいた。
にっしーは、よくわからない。
あの日以来、メンバー誰ともちゃんと話はしていない。
「とりあえず、これからAAAをどうするか俺たちの意見をまとめておこう」
直也君が大きなため息をついて、額を抑えた。
顔色が悪い。
みんな、ここ数日ちゃんと眠れていないのかもしれない。
「どうするかってどういうことだよ」
「千晃が抜ける。7人から6人になるんだ。
さっき秀太が言ったように歌割もダンスも、いろんなことに変化が生じる。
女子が宇野ちゃんだけになることで、宇野ちゃんの負担も増える。
ファンは、混乱する」
「それなら…解散するってこと?」
「・・・解散するかどうかそれも含めて、俺たちがどうしたいか決めなきゃ会社と話し合いができないってことだろう」
「・・・」
「私は、6人でも続けたい」
「宇野ちゃん…」
「千晃が抜けるのは寂しい。
その穴を埋めるのは簡単なことじゃない。
でも、AAAを続けたい。
まだ私たち、やりたいことがあるよね?
出来ることがあるよね?
私はまだ、AAAに可能性があるって信じてる」
「・・・俺も宇野ちゃんと同意見や。
たぶん、ファンは千晃が抜けたことで動揺するし、離れていく子もおると思う。
でも、俺らをそれでも応援してくれる子もたくさんおると思う。
まだまだ俺たちが出来ることはあると思う。
やで俺も6人で続けていきたい」
「にっしーは?」
「俺は逆にいい機会だと思う。
アリーナからドームへステップアップできて、これからさらにAAAが成長していくこのタイミングで千晃が抜けるのは痛手だけど、
でも、今このタイミングだからこそAAAはもっと成長できるかもしれない。
どういう風に変わるかは今はわかんねぇけど」
「西島にしてはポジティブだな。
俺も賛成だね。
ここにきて千晃が抜けるっていう大きな変化は吉と出るか凶と出るかはわからないけど、でも俺たちならこれをプラスに変えられる。
簡単じゃないけど、今ここで解散なんて選択肢はないね」
「秀太は?」
「…俺は、
俺は正直、千晃のことを納得はまだできない。
そんなに簡単に割り切れるもんじゃねぇし、
みんなみたいに前向きにとらえられねぇ。
でも、AAAが解散なんてぜってぇねぇ!
俺たちはまだこれからだろ?
これからまだやれることあるだろ?」
「直也君はどう思う?」
「俺は、
俺は正直、もうダメかもしれないと思った。
7人だからこそ築いてこれたものが確かにあったから。
でも、
俺もまだやりたいことがる。
やれることがあると思う。
やろう。
6人でも、AAAを続けよう」
この部屋に充満していた重い空気が、少し和らいだ。
まだまだ一人ひとり、それぞれがこの問題に向き合わないといけないけれど、
それでも私たちはまだ止まらないと決めた。
これから先のことはわからない。
でも
今はこの先を見据えて
今ここにいる6人で
明日を歩こうと決めた。
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