My wish is... 第十一話



目が覚めると、これは夢なんじゃないかと何度も思う日が続く。



年末に向けて、AAAとしての仕事は過密スケジュールとなり、連日メンバーとは顔を合わす。


その中には先日妊娠を打ち明けた千晃もいたが、結局まだちゃんと話すことができないまま私たちは忙しさを理由に問題を先送りしていた。


あの日、日高君の提案で、明後日もう一度話そうと決まったものの、

千晃の体調が悪く結局は話ができないまま4日が経った。



そんな状態でも7人で仕事はあり、年末のレコード大賞、紅白歌合戦、そして毎年恒例のNYPに向けてリハーサルや打ち合わせが行われていた。




「今日、このあと少しミーティングルームで話をするから」



避けてきた、この瞬間がやってきた。



ミーティングルームに行くとメンバー以外は席を外してくれた。


久しぶりの7人だけの空間。





「何から話したらいいのか正直迷ってるけど、俺から聞かせてくれ」




直也君がまず口火を切った。




「出産して、生んだ後戻ってくるっていう選択肢はないの?」



それは誰もが思っていることだった。

何も、辞めなくてもいいじゃないか。




「…私も考えたよ。

出産した後、復帰してAAAの伊藤千晃に戻るってことを」


「じゃぁっ」



「でも!!


考えれば考えるほど、無理だと思ったの!!


AAAの伊藤千晃としているためには子育てしながらなんて無理なんだよっ。


一年のうち半分はライブをして、そのために普段から練習して、体力を維持して、健康を保つ。


ライブに穴をあけないためにけがにも気を付けて、普段の生活をそこに合わせていく。


そんな生活が子育てをしながらできるなんて思えない!


それに、どちらも中途半端なことはしたくないの。


せっかく授かった命、大事に育てていきたいの。




だから、



AAAの伊藤千晃を続けることはできないの」






「そもそもなんでっなんで今なんだよっ!」



「秀太…」




「俺たちやっとドームにも立てて、まだこれからやりたいこと、やれることあっただろ?」



「そう。

MISACHIAツアーだって3月に控えてたんじゃないのかよ」




「・・・それは…本当に申し訳なかったと思う。


でも、できてしまったことは変わらない。

この子を産まないなんて選択肢はないのっ」




「…秀太、直也君。それはもう今言ってもしょうがないことだし、

千晃を責めたってしょうがないよ。


それよりもこの先俺たちはどうするのか、千晃はどうするのか決まっていることを確認しよう」




「・・・っお前はいつも冷静だな」



「ふぅ

あのね、今俺に切れられてもね、どうしようもないから。


俺だって混乱しているし、困惑してる。


でも、今することは千晃を責めることじゃないだろ?」



「・・・千晃、俺は千晃がお母さんになるってことすごいことだって思うで。


タイミングはそりゃびっくりやけど、いずれ千晃もそして宇野ちゃんだって結婚してお母さんになるんかなって思ってたし。

それが今だっただけのことやん。

やから俺は、・・・・めっちゃさみしいし、めっちゃつらいけど、

千晃を応援してるでな」



「・・・しんちゃん」




「にっしーは何か言うことないの?」



「・・・俺は千晃が決めたことだから何かを言うつもりはないよ。


だって千晃はもう決めたんだろ?俺たちが何か言って簡単に変わるような気持ちで『卒業』を決めたわけじゃないだろ?」




「…うん。


私の意思は変わらない」




「ならもう俺が言うことはないよ。


ただ、相談してほしかった。それだけだよ」





「・・・」






「宇野ちゃんは?言いたいこと、ないの?」:





「・・・千晃が決めたことなら応援したい。


千晃には素敵なお母さんになってほしい」





震える声。


うまく笑えてるかな?


ここで泣いても、叫んでも、きっと千晃は悲しむだけ。




きっと私たちに言うと決めたときから千晃の気持ちは固まってる。




もう、戻ってくることはないんだ。




だって千晃はもう、




もうあの頃の千晃じゃない。



もう、母の顔をしてるもの。









結局この日はまだみんなが冷静に話せるような状態ではなかった。


ただどうすればこのことを受け入れられるか、それは誰にもわからなかったが、時間だけは無情にも過ぎていき、年末が刻一刻と近づいてきていた。




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